2024年になったのか
幼馴染は24という若さで他界した。
告別式は真っ白な部屋で行われた。四角い空箱のような部屋に、黒い服を着た人間が大勢集って静かに泣いている。
彼が見たら笑うだろう。蟻が集ってるみたいだと、不謹慎な揶揄をぶつけ、彼を愛した全ての人を馬鹿にして、オレに同意を求めてくる。
『譲るって『他人に与える』って意味があるんだって!可愛そうな名前だねぇ』
無邪気に、無邪気に笑い飛ばす。彼の悪意無き暴言を思い出し、人生で初めて読む弔辞を前に、口元は自然と緩んでいた。
昨晩、必死で仕上げた弔辞を手に、顔をあげる。
そこには小鳥が居た。ちいさな写真の中でにっこりと綺麗に笑っている。男の癖に、相変わらず変に色気のある奴。
オレの愛した生涯の友。
「ーー小鳥は良いときに死にました。耳が聞こえなくなってきたから」
これはオレから小鳥への、はなむけの言葉だ。
□■
はじまりは5歳の頃だった。
書道の展覧会で、小鳥の「いちばん」に対する執念が爆発した。彼は獣のように叫び、狂ったように泣き喚いた。
「審査員を呼んで。どうしてボクじゃないの。どうしてゆずるが一番なの」
小鳥は美しい髪をかき乱し、身体を抱えるように蹲った。床に爪を立てながら低く呻く小鳥は、まるで獰猛な動物だ。
彼の足元にはびりびりに破かれたオレ宛ての賞状が散らばっている。
【金賞・高橋 譲】
名を呼ばれたとき、オレは幼いながらに「やばい」と感じた。その結果がこれだ。
「どうして誰も、何も言わないの。ねぇ、誰か、なにか言って。ねぇ。この部屋にいるひとたちは、みんな死体なの?ねぇ、ーー何か言えっ!」
総勢18人の習字教室は水を打ったように静まり返っていた。小鳥の狂気に当てられた生徒たちは怯え、彼を刺激しないように気配を潜めてる。その行為がまた小鳥の癇に障ったらしい。
「どうして誰も、何も言わないの!」
小鳥の中指の爪が弾け飛び、ようやく我に返った先生が慌てて小鳥を抱き上げた。混乱する生徒を宥める抱き方ではなく、縄で手足を縛りつけるような乱雑な抱き方だった。
「小鳥君、落ちついて。また次で頑張ればいいじゃない。展覧会は何度だってあるわ」
「ちがう。今日の展覧会は今日しかない。今日選ばれたのはゆずるだ。ボクじゃない」
小鳥の激しい癇癪は鎮まらない。
訴えるように怒鳴り散らす小鳥の心を、大人なんかが理解できるわけが無かった。オレは、小鳥の血塗れの中指をじっくりと観察したあと大きく息を吸った。
「ことり」
今にも先生の肩に噛み付きそうな小鳥の前に跪く。手足をバラバラに動かして暴れる小さな獣は、一時的に動きを止めた。獰猛な瞳がギロリと動く。
「なに」
「オレの金賞はお前にあげる」
目の奥が鈍く光ってる。オレは剥き出しの怒りを包むように、小鳥の顔に手をかけた。
「これで小鳥が金賞だ」
「…ちがう。金賞はゆずるのものだ。ボクじゃない」
「審査員が間違えたんだ」
「そんなことない。だって誰も否定してくれない」
「違うよ。みんなだって小鳥が一番だと思ってる」
小鳥は涙の溜まった瞳をすっと細めた。言葉の真偽を見極めている。
「…ほんとう?」
「うん。本当」
まっすぐ見つめて肯定すれば、小鳥はどこか遠くを眺めるようにぼんやりと虚ろな目で「そっか」と呟いた。ぷつっと糸が切れたように、だらんと手足の力を抜く。
「ゆずるは、ボクの下?」
「そうだよ。お前より上はいない」
「ボクがいちばん?」
「小鳥がいちばんだ」
何度も頷き肯定すれば、小鳥の瞳に生気が戻っていく。
ぼくがいちばん。確かめるように繰り返し、やがて憑きものが落ちたような穏やかな表情を浮かべた。
「じゃあいいよ。許してあげる」
小鳥はしなやかな動物のように先生の身体からぱっと離れ、オレを抱きしめた。
彼の笑顔が好きだった。
神に寵愛された美しい容姿をしている小鳥は、笑うと天使のように可愛かった。その微笑を向けられることが純粋に嬉しかった。
大人達は小鳥の我侭を「しょうがないわね」の一言で享受し、甘やかす。実際オレも小鳥に懐かれるのは気分が良かった。だから許すのだ。彼の我侭を、その傲慢を。
「ありがとう、ゆずる」
小鳥は、他人が上に立つことを許せない。気高いプライドと、見合うだけの実力。可愛らしい容姿、騙される大人たち。
小鳥は、他人を許すことを知らなかった。
■□
小鳥が習字に興味を失くした。
全国書写書道展で金賞を取った冬の暮れだった。
「飽きちゃった」
潮時だ。投げ捨てるような小鳥の声を聞いてすぐにわかった。
その一言を境に、小鳥はぱったり習字をやめた。頂点を極めた直後だった。勝ち逃げするには好機だ。だけど小鳥のソレは勝ち逃げとは違う。本当に興味が失せたのだ。
始めは小鳥の両親も、未練なく手を引く淡白な小鳥の性格を懸念した。しかし小鳥がその愛らしい顔で「次は別の習い事がしたいな」と微笑めば、両親は苦笑いしつつ、小鳥の意思を尊重した。
小鳥は様々な分野において、才能をいかんなく発揮した。
□■
オレたちは同じ小学校へ入学した。
「ゆずる、ボクより仲良しの子は作っちゃ駄目だよ」
洗脳するように何度も何度も言い聞かせては、オレの交友関係に制限をかける。小鳥は、閉鎖的な二人の世界に他人が介入することを過敏に嫌がった。
言われた全ての言葉に頷づけば、ようやく彼は安心したように微笑むのだ。
「ゆずるは一生、ボクと生きるの」
言葉の重さを理解したわけじゃない。自己犠牲や献身のつもりもない。ただオレは、天使のように可愛い小鳥の要望すべてに応えてやりたかった。
・
・
・
これだけ激しい束縛をしておきながら、学校内でオレたちが親密に接することはない。小鳥は一番大きいグループの中心で毎日を過ごし、オレはどこにも属すことなく、色んな友達と色んな遊びをしながら日々を重ねた。
当たり障りなく人と関わるオレと、人の懐に入り込むのが上手い小鳥。
避けてはいない。用があれば会話もする。関係を隠しているわけでもない。
「ゆずる」
ランドセルを背負い、帰ろうとしたところで小鳥が近寄ってきた。背後に二人の女子を引き連れている。大方、小鳥と一緒に帰ろうと狙い、話しかけるタイミングを窺っているのだろう。小鳥は気づかないままオレの隣に並んだ。
「ねぇ。今日お父さんがいないから、ちゃんと静かにできるならお泊まりして良いって」
心底嬉しそうに笑ってオレの服を掴む。オレは頷いてから女子たちを見た。その視線を追って小鳥も振り返る。
女子たちは盗み聞いた言葉に目を丸くしていた。
「小鳥くんと譲くんって仲良いの?」
「仲良いよ」
まさかね、という意味を含んだ声に返答したのは小鳥だった。
仲が良い。それは間違いじゃない。学校から帰宅したあとはどちらともなく互いの家に入り浸り、休日はベタベタと四六時中一緒にいる。
小鳥がにっこりと微笑んだ。
「ゆずるはオレのものだから」
一瞬心がぐらついた。小鳥があからさまに女子を牽制したことに、全身の毛がぶわりと逆立ったのだ。それがどんな感情なのかは分からない。
小鳥は興味の失せた顔で女子たちを一瞥した後、静かな音楽のような声で言った。
「行こう、ゆずる」
オレを見上げる小鳥の瞳は純度の高い水のように澄んでいて、慈愛に満ちたものだった。
この頃にはもう、人が人を所有できると本気で信じ込んでいる小鳥のその目は、見慣れたものだった。
愛情と支配、信頼と友情は本当によく似てる。小鳥はその、似て非なる感情の名をすり替えて教え込むのが抜群に上手だった。
支配されてると感じるたび、嬉しそうに笑う小鳥の笑顔が、頭の隅を掠めていた。
■■
小学3年生、夏。小鳥は絵に夢中だった。
小鳥一家が海外旅行から帰国したその日、小鳥はいつも以上にオレの傍から離れず、オレもまた小鳥の傍から離れなかった。絨毯にぺったりと座り、身を寄せ合う。
オレたちの間に遊び道具なんて必要なく、互いがいればそれでよかった。
「ゆずる、ボクがいない間なにしてた?」
「家で課題してた」
「だれかと遊んだ?」
「遊んでない」
「一週間ずっと?」
「ずっと」
小鳥がむくれた顔をする。
「ボクがいなくて寂しかった?」
「…それなりに」
「ボクはゆずると離れてて辛かったよ」
この頃、小鳥の独占欲や依存は緩やかに鳴りを潜めていた。いままでの小鳥なら、寂しかったと素直に告げないオレを罵倒しただろう。叫び、怒鳴りつけ、相手を罵って支配する。それが小鳥の所有欲だ。生まれながらに猟奇的な気質だった。
いまは違う。こうして、媚びるように甘えて機嫌を取る。子供が人格を形成していく様というより、強さ順に群れを成す動物が政治を覚えたみたいだと思った。成長というより進化に近い。元々優れたビジュアルに媚びという名の可愛らしさを武装して、小鳥はいったい何を目指しているんだろう。
「海外旅行はどうだった?」
「水がまずい。足湯かトイレの水を飲んでるみたいだった」
真顔で告げる小鳥を笑って髪を撫でる。
ほかには?と続ける。
「風景が綺麗だった」
「へぇ。どんな?」
「バオバブの木とか」
「バオバブの木?」
「知らないの?星の王子様に出てくる大きな木だよ。絵を描いたんだけど、見る?」
「見たい。見せて」
「本当に知らないんだね」
ゆずるは馬鹿だ、と小鳥が誇らしげに笑う。本当は知っていたけど、オレは笑って「小鳥は博識だね」といった。本で身につけた知識より小鳥の感性を介して知る世界のほうがよっぽど美しく、数倍楽しい。
小鳥は一冊のノートを取り出した。
「見ていいよ。本当はまだ途中だから人に見せたくは無いんだけど、ゆずるは特別」
確かに完璧主義の小鳥が、未完成の作品を見せてくれることは珍しかった。オレはそのノートの表面を指先でひと撫でしたあと、ゆっくりと紙を捲った。
紙には世界が凝縮されていた。
星の王子様に出てくる巨大なバオバブの並木道。
えんぴつで描かれたその絵は、ペンの濃淡をうまく活かして色彩や遠近を表現している。小道に並ぶ巨木、世界で4番目に大きい島・マダガスカル。すっと伸びた太い幹に、彼岸花のような咲き方をした緑の葉。伸びる空。沈む太陽。
終焉を氷結したみたいだった。
「夕方だったの?」
「うん」
黒い筆圧に赤が見えた。夕焼けに照らされたバオバブの木と、その奥に燃え落ちる炎の玉と、細長い雲。
無意識にページを捲った。イタリア・南、卵城。殴り書きされた文字の下に、広がる要塞。
「卵の城って書いて『ういじょう』って読むんだって。ナポリにある監獄だよ」
小鳥は歌うように語る。
オレは正座したままノートを凝視した。
「魔術師が城に埋め込んだ卵が割れるとき、ナポリに災いが起こるんだって。監獄が綺麗だったから描いてみた」
「監獄って人を閉じ込めるところだろ。怖いよ」
「いまは観光名所だ。怖くないよ」
監獄が怖いんじゃない、オレはその絵が怖かったのだ。品減の悲鳴が聞こえてきそうなほど重々しく不気味な建物を「きれい」と言った小鳥の感性が。
小鳥はオレの足を跨ぐように腕を伸ばし、ページを捲った。
「これ、サントリーニ」
「アトランティス伝説の?」
「そう」
海に沈んだ島アトランティス。そんな伝説を秘めた地のエーゲ海を小鳥は描いていた。
水平線に沈みゆく太陽の遠景、紺碧の海を金色に輝かせる美しい光の球体は、平面の紙から飛び出してきそうなほど神々しい。
世界が投影された一冊だった。
正座をしながら一枚ずつページを捲り、何時間もかけて丁寧に鑑賞した。時折小鳥が思い出したように説明を加え、オレは黙ってその言葉を聞く。
人通り見終わった後、壊れ物を扱うようにゆっくりとノートを閉じた。
「小鳥は天才だ」
「そうかな?」
「そうだよ」
人は感動で泣きたくなる生き物だと初めて知った。絵を鑑賞するオレの隣で、小鳥は静かにオレの横顔を眺めていた。天才だ。絵に関してだけじゃない。小鳥の探究心は天が与えた才能だ。
「小鳥は画家になるのか?」
問えば、小鳥は気持ち良さげにふふんと誇らしげに鼻を鳴らすだけで、決して頷きはしなかった。
「絵も良いけどボク、死んだあとまで残るものって好きじゃないんだ」
やがてノートが一冊埋まった頃、小鳥は絵を描くのをやめた。
いつも通り最後は呆気なかった。あれだけ大切にしていたノートをぽんっと投げ捨てるようにオレに寄越し「ゆずるにあげるよ」と笑った。
飽きちゃった。
まるで呪いの言葉だ。
□□
小鳥が風邪を引いた。
小学5年生。小鳥がスポーツにハマッていた頃だった。39度の高熱を出し倒れたと聞いたときは、自分の事のように心臓が痛くなった。オレは両親の許可の下、堂々と学校をサボり小鳥の看病に勤しんでいた。
床にクッションを置き、ベットに横たわる小鳥の手を握る。
30分ほど前に起床した小鳥は怖い夢をみたとオレに告げ、虚ろな瞳でもう二度と寝ないと宣言し、うーうーと唸りながら病魔と闘っている。
「小鳥、大丈夫?」
「うう…三途の川の向こうにお婆ちゃんが見える」
「小鳥のばあちゃん、まだ生きてんじゃん」
発言が支離滅裂なのは熱に侵されてるせいだと片付る。小鳥は枕に頭をぐりぐりと押し付け、繋いだ手に力をこめた。
「もっとボクのこと労って」
「労ってるだろ」
実際、オレが小鳥の看病を始めて3日が過ぎた。
医者はただの風邪だと言ったらしいが、明日まで延びるようなら別の医者に罹ると小鳥の親が言っていた。大袈裟だよ、と熱に浮かされた小鳥は気怠げに笑う。
「最近はほとんど外で遊んでたから、知らない間に疲れが溜まってたんだ。明日になれば治る」
「それ昨日も聞いたけど」
「今度はほんと」
伸び盛りにスポーツを始めたことが影響したのだろう。オレよりも背が低く女の子のように愛らしかった小鳥は、整った容姿のまま、性を感じさせない中世的な少年へと変化した。
ダンスにサッカーに野球にバレー。彼が「やりたい」と望んだ競技に適応していく柔軟な身体。羨ましいと妬む心は昔に捨てた。
「小鳥は本当に凄いね。お前が興味を持ったものは、ぜんぶお前のものになる」
「ぜんぶじゃないよ。料理は苦手」
「それはお前が興味を持ってないからだ。本当に好きになって、極めようと思えばすぐにできるようになる」
「そうかなあ…」
その声は掠れていた。小鳥は薬と相性が悪い。鎮痛剤も解熱剤も効果が薄い。可哀相な奴。
小鳥は優しいかおでオレを見た後、ふいに不安げな目をして天井を見上げた。
小鳥は時々、こんな風にぼんやり遠くを眺めることがある。宇宙の果てをみるような、風の始まる場所を探すような、途方もない何かを瞳に映しこむように。
やがて小鳥はゆっくりと瞳を閉じ、静かな声で「ゆずる」と呼んだ。
ころんと横向きに寝返ってこちらを向く。
「一緒に寝よ」
「はぁ?」
突然の言葉に顔をあげれば、繋いでいた手を強く引っ張られ、前屈みになった。そのまま引き摺り込むように腕が布団の中に潜り込む。
オレは一瞬ためらって小鳥をみた。
乱れた黒の髪が白いシーツに映え、熱でうるんだ瞳がゆらりと揺れる。少し見ない間にまた背が伸びた。運動をして骨格がしっかりしてきたのだろう。重たい毛布を片手で軽々と持ち上げ、隣に来いと促す小鳥は、紛れもない男だった。
少女のように可愛らしかった、あの小鳥が。
あの小鳥が。
「…一緒に寝るのはまずいよ」
「なんで?」
「なんでって。オレにその風邪が移ったらどうしてくれるんだよ」
だめだと思った。オレは眩しいものから目を背けるように視線を逸らした。本能だ。本能で駄目だと思う。
引っ張られた腕を突っ張るようにぴんと伸ばし、拘束されていないほうの手でベットのふちを掴む。駄々をこねられるのは目に見えていたからだ。
だからこれは、ベットには入らない、という強い意思表示のつもりだった。
なのに。
「そしたらボクが看病するよ」
掠れた声で笑う気配がした。
手首を掴んでいた小鳥の指が離れ、ほっと息を吐くと同時に二の腕を掴まれた。それから物凄い力で引っ張りこまれ、オレの上半身は吸い込まれるようにベットへと引き摺りこまれた。
小鳥の腹近くに顔面を埋めたオレは、縦に寝る彼に突っ込むような態勢で飛び込んだため、いびつなTの字を描いて、毛布の中へと閉じ込められた。
「っおい、小鳥!」
「はははっ。このまま窒息死するか諦めてボクと一緒に寝るか、どっちがいい?」
「わかった…わかったから!」
閉じ込められた毛布の中で、オレは酷く混乱していた。
相手が病人だという事も忘れて荒々しく毛布を剥げば、小鳥はケラケラ笑いながら「寒いよ」と言ってオレの二の腕を離した。
「おいで、ゆずる」
拘束は解かれた。なのにその声に抗えない。
「もっと壁の方寄れ、ばか」
「えぇー。だって氷枕あるし」
「枕ごと寄れ」
グッと枕を押しやってベットに乗る。甘えたな小鳥がくっついてくる気がしたので、オレは小鳥に背を向けてごろんと寝そべった。案の定、小鳥は楽しげに笑いながらオレの背にくっついてきた。
「なんでそっち向くのさ」
「向き合ってたらおかしいだろ」
「そうかな?」
「そうだよ」
苦しい言い訳かとも思ったが、とくに追求はされなかった。小鳥は何が楽しいのか、どこか違う国のことばでうたを歌いながらオレの背中に額を押し付けていた。
「あ。そういえばさ、この間国語で『ゆずる』って漢字を習ったんだけど」
「…なに」
「譲るって『他人に与える』って意味があるんだって!可愛そうな名前だねぇ」
「はやく寝ろ病人!」
幼少期から小鳥以外の人との接触が極端に少なかったオレは、人に触れられることが苦手だった。頭を撫でられることはもちろん、小鳥以外の人間の指先が触れるだけでぞっとする。
小鳥だけだ。
小鳥だけは許せる。小鳥だけがオレのーー
ゆっくりと目を閉じる。背後にひとの気配がする。小鳥の匂い、小鳥の体温。
これは支配だ。形成される人格に小鳥の意思が刷り込まれる。彼の都合の良いように、彼が望むべき存在で在るように。
かつて、オレの隣には天才の幼馴染がいた。
彼はオレのすべてだった。
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リハビリ小説。海外文庫読んでると洋画字幕風の小説を突発的に描きたくなります。
「おいおいなんてこった。こんな歴史に刻まれる大事件に立ち会えるなんて光栄だなダニエル!」
「ママのおっぱいが恋しくなったかいベイビー」
なんで洋画ってあんなに面白い言い回しするの大好き。
小鳥は香取と同じ発音です。こ↑と↓り↓。
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